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Home > なのフェイ中学生長編 > #3 ~ Innocence ~ 『 純真 』

#3 ~ Innocence ~ 『 純真 』

中学生なのフェ連載三回目です。
ソフィアって誰?リアってなに?ってひとは前回のをよんで下さい。

ソフィアの設定はこんなかんじです↓

settei.jpg

いや、ざつですみませんほんと。



え、えと。
時空管理局様、補足ありがとうございました!!
な、なんでこんなかそぶろぐを?同情??
な、なんてやさしいんだリリカルなのはの関係者は…ジーン(´・ω・`*)

ありがとうございます!!ヾ(*´∀`*)ノ゛

では、追記より連載SSです。
今回のはちと長め?

まえも言いましたが(書きましたが)オリキャラがでるので、苦手な方は注意してください!!














揺れる木が、私を押す風と共鳴して。
青く突き抜ける空に溶け込むように、その葉の一枚一枚は光っている。

まるで、私を嘲笑うかのように。






#3 < かぜのこえ >






「―…ようこそ。管理局の皆様」

赤い色に近い、紫色の長髪。
真っ白い、人形のように血の気のない肌。
薄く、上品な唇は、震えるようにそう言った。

森林に囲まれた、そこは小さな湖。
人気がなく、聞こえるのは森の囁きと、鳥の鳴き声くらいで。
居るのは、私たちと、目の前に居る、彼女たちだけだった。

外見だけだったら、かなりの美少女であろう、彼女たち。
年齢は十四、五歳。
赤紫色の髪と青紫色の髪が、綺麗に調和していて、思わず見ほれてしまう程。

「悪いけど、私たちの邪魔をするつもりなら、容赦はしないよ?」

青紫の、短髪の少女が、言った。
藍色の瞳が、射抜くように貫いてくる。
その微笑には、余裕も見える。

「貴方達の…、目的を教えてくれる?」

私の隣に居る、彼女が呟く。
いつものような甘い声ではない。
強い意志と、力のある声。

「時間が無いんだ…。其処をどいて欲しい」

それは、懇願ではない。
命令だった。
勿論、それに彼女が易々従う筈が無い。

「もう一回訊くね。貴方達の、目的はなに?」

威圧感まで感じられる、攻防戦。
そして、それは長くは続かない。
口火を切ったのは、向こう側だった。

「…リア」
「あら、貴女らしくないわね。何時もならもっと冷静なのに」

リア、という名なのか。
長髪の少女は、くすりと笑う。

「状況が、状況だからね。
冷静でなんていられないよ」
「ええ…。分かっているわよ、ソフィア」

それは私たちの事など眼中に無いと言っているかのようなやりとり。
いい気分はしなかった。

「…ラファエル」

デバイスの、起動。
訪れたのは、優しい風。
包み込むような、風が、肌を、髪を、身体を、撫でた。

煌々としたそれは、武器というには余りにも不自然な機体だった。
杖方の、白いデバイス。
まるで一つの芸術作品のようなそれは、不死鳥を象ってはいるものの、とても脆そうな、ガラスのようなものだった。

「戦う、つもり?」
「ええ…。まあ、あまり、争いは好まない性質なんですけど」

微かに笑い、その反動で金色の髪飾りが揺れる。
美しい微笑み。
ただ、悲しみが重なって見えて、私は好きになれそうもない微笑。

「あなた方は三人ですが、此方は二人です。
リアに無理をさせたくはないので、私は其方の二方をお相手しようと思うのですが、如何でしょうか?」
「…余裕のつもり?」

彼女が指したのは、私となのはの二人だった。
こちらに分を寄せてくれるのはありがたい話だったが、フェアでない勝負を嫌うなのはは賛同しようとはしていない。
勿論、私も。

「いえ、そういう訳ではありませんけど。
その私にとっても都合がいいもので。時間も短縮できますし、ね」

どうやら、本気らしい。

「後悔するよ?」
「そのような余裕は、生憎残っていないんですよね」

なのはがレイジングハートを構える。
その瞳は、星のような煌きを放って、光る。

「フェイトちゃん」
「うん、なのは」

怖くは、ない。
そう思って、私は戦うことを選んだ。
風は未だ吹き続ける。包むように、急かすように。

「…雪のような炎を、届けてあげます」

赤い、光。

「レイジングハート」
『Yes my master』

見慣れた桜色の光が、優しく、強く、現れる。
少し見ほれて、私も自らのデバイスを構える。

少女は、微笑む。
幼さとあどけなさの残る、だけど隙の無い微笑。

その瞳に宿っているのは、強い意志と、そして、力。
隣の彼女に、よく似た瞳だった。





 1






「あーあー。あっちはあっちで、勝手に話が進んどるみたいやなぁ」

戦闘の開始された場から少し離れたそこには、はやてとリアが居た。
和やかに見えて、僅かではあるが戦闘の予兆も見られる。

「……貴女、苦しくないの?」

ぽつりと漏れた、呟き。
その目は、同情のように、細められる。
はやては一瞬、ほんの一瞬だけ表情を崩したが、直ぐにいつもの余裕と怠慢さに満ちた顔に戻る。

「何のことや?」
「惚けなくてもいいと思うけど。
まあ、良いわ。何時までもお話を続けていると、ソフィアの機嫌を損ねてしまうもの」

ふう、と一息吐いたリアは、ゆっくりと、無駄の無い動きで、首に掛かっていた月の容をしたアクセサリーを握った。
恐らく、それが彼女のデバイスなのであろう。
鈍い鋼のそれは、優しい光を放つ。

それはソフィアと同じ、杖型のデバイス。
月を象ったそれは、白い光を放ち、輝く。

「私も、ソフィアと同じで、争いはあまり好きではないの。
だから、私は広域が得意なのよ」
「ほお…。そりゃ、奇遇やな」

はやても即座に、シュベルトクロイツを構え、挑発するように笑った。
対し、穏やかな笑みを表すリアはそんなはやての挑発を軽くかわした。

「リインフォース」
「はい、マイスターはやて」

リインの姿を、その瞳に捉えた瞬間、リアは眉を顰めた。

「…人格型、デバイス?」
「ああ。ウチの相棒や。よろしゅうな」
「そう…」

ほんの一瞬、リアははやての後ろで戦闘しているなのはを見た。
それは、ほんの一瞬。

「複雑、なのね」

その間に何を読み取ったのだろう。
その眼ははやての弱い部分を確実に映していた。

「大きなお世話、や」

はやてが、片腕を水平に上げる。
それを合図に、光が生まれる。

「リイン」
「はいです!!」

白銀の光が、その空間を包む。
リアの瞳は、先の虚勢の発言に、悲しい色を滲ませていた。
想いの大きさも、覚悟も、そして、弱さも。
全てを包むように。

『ユニゾン・イン!!』

白髪に、澄んだ蒼の瞳。
その表情は、全てを振り払い、全てを押し隠す強い力に満ちている。

「…綺麗ね」
「そりゃ、どうも」

黒い羽根が宙を舞う。
その美しさには、誰もが見惚れる程。
だが、その美しさは、ただ外見のものだけではない。

「強いのね、貴女」
「当たり前や。ウチはこれでも一応SSランクなんやからな」
「そうじゃないわ。心が、よ」

ふん、と鼻で笑い、はやてはそれ以上の反応を見せなかった。
リアも、それ以上はやてに対してそういった類の言葉は掛けなかった。
掛けても無駄だと思ったのか、これ以上深入りすることを拒んだのかは、分からない。

はやては、至って平気そうな顔をしている。
おざなりの仮面、などではない。
少しずつ少しずつ作り上げた、強靭な仮面だった。





 2






『Accel Shooter』

桜色の光が、飛ぶ。
神々しい眩しさを放つそれは、一直線に目の前の敵を貫こうとする。

だが、それをいとも簡単に防御してしまう彼女…ソフィアも、中々の腕だと見える。

「お綺麗な、魔法光ですね。なのはさん?」
「どうも。…ソフィアちゃん?」

少し、何故か、その光景が気に食わなかった。
戦闘中の邪念は控えるようにしているのだが、いくら意識しても止められないのがこの感情だった。
偶に、はやてとなのはが仲良さそうに会話しているのを見ると、これに似た感情が湧き上がる。

「…プラズマランサー」

その感情の正体は分からないが、私はこれが嫌いだった。
醜く、暗い、彼女が嫌いそうな感情だったから。

「ファイア!!」

彼女の桜色の光の次に、私の光の色が好きだった。
リニスが育ててくれた、この光が。

そして、彼女を護る剣になれる、この光が。

「…貴女も、美しい色をお持ちで」
「……どうも」

どこまでも上品な態度と、気品。
見た目の活発そうな雰囲気に対して、温和な声と優しい瞳。
そして、赤い光。

「まあ、リアの色にはてんで、敵いませんけど」

不死鳥の嘴から、その赤い光が溢れ出る。
それに翻弄され続け、十数分。
未だ彼女の攻略法が見つからないのが現状だった。

「……羽撃け、エンジェル」

血のように、深い真紅。
それは矢のような形になり、襲って来る。

「フレイム・アロウ!!」

彼女の背後に、フェニックスが見える。
炎のような魔力光が、揺らめき、幻覚のように。
その翼から舞う羽根が、一斉にこちらに向かって飛んでくる。

とっさに防御するものの、防ぐのがやっと。
少し気を抜けば、貫通される危険性もある。

どうやら、二人同時に相手を、というのは単なる驕りではなかったらしい。
自分の力への確かな自身と、確信に満ちた戦いをしてくる。

「っ…!」
「なのは、平気?」
「うん。…フェイトちゃんこそ」

少し苦しそうな顔で、なのはは言った。
こんな状況でも相手を思いやるなのはは、とても危なっかしい。

だからこそ、危険な目になんて、遭わせたくない。

「バルデッシュ!」
『Yes sir』

その為の魔法。その為の力。
そう、思っていた。

そう。
驕っていたのは、私の方だった。

何の確信も、確証もない。
愚かな考えと、浅はかな覚悟。

「ハーケンセイバー!!」
「……」

刃は一瞬にして方向を変えられ、湖の中に吸い込まれる。
どん、という衝突音が響いて、光は耐える。

私が注意を引き、その隙をなのはが突くという、よくなのはと使う戦法で仕掛ける。
一瞬にして敵の背後へ移動したなのはは、私が視界に捕らえたときにはもう次の攻撃の発射寸前だった。

「ディバイン・バスター!!」

桜色が、弾ける。
防御は、間に合わない。

「くっ…」

乾いた音。
煙が昇る。

宿ったのは、一瞬の安堵。
無音の空間に、油断という、邪な心。


「――!! フェイトちゃん、逃げて!!」

真紅が、
私の視界を埋めた。

「っ…!?」

油断したのが悪かったのだろう。
私はその光に、飛ばされた。

「フェイトちゃん!!」

とっさに背後に受け止めるための魔方陣を張る。
それでも吸収しきれない衝動が、何本かの木と私に掛かる。
彼女の、私を叫ぶ声が聞こえる。

「が、はっ、……」

幸い、ダメージは薄く、立てなくなるほどではなかった。
私は慌てて体勢を立て直す。

「なの、は…」

私よりも危険な状態なのは、むしろなのはだった。
今、なのはは少なからず動揺している。
私がヘマをしたせいで、なのはが傷付く可能性がある。
私のせいで。
それだけは、どうしても避けたかった。

「はぁ…。つくづく、甘いよ。私は」
「え…?」

矢は、確実になのはの心臓を貫くことができた筈だ。
しかし、それは動くことを止め、消えていた。

「でも、甘えん坊は嫌いだから。
今度は不意打ちじゃなくて、堂々と倒してみたいな。
ね、どう? フェイトに、なのは」

顔に、瞳に。
陽気さと、あどけなさ。

「…随分と、嘗められたものだね」

好奇心旺盛な、少女の姿が、そこにはあって。
ふ、と笑って、その瞳を見つめる。
ボロボロのバリアジャケットで、ただの虚勢にしか捉えられなかったかもしれない。
でも、それでも充分だった。

「うん。…フェイトちゃん」

頬から垂れてくる血を、手の甲で拭う。
黒い布に、赤い血が付着して汚れた。
バルデッシュを握る力に力を込め、気を引き締めた。

「貴方達が、ここに来た目的を話すまで、私達は引きません」
「まるで、勝つことを前提にしているような台詞だね。
とても、気に食わないよ」

デバイスの矛先を向け、彼女は不気味に笑う。
その目は、先刻の、一刻も早く私たちを倒してこの場を後にしようとしていた冷静な目ではない。
ただ、純粋にこの場の戦いを楽しんでいるような目だった。

「君たちとは、覚悟が違うんだ。
勝たなきゃならない理由も、負けられない信念も、私達は何一つ君たちに劣っているつもりはない」
「………」

思わず、息を呑んだ。

一瞬。
勝つことが想像できなかった。

圧倒されていた。

「ねえ、ソフィアちゃん…」
「ラファエル……劫火の翼‐ウィング・ファイア‐」

なのはの呼びかけには答えず、彼女はデバイスに魔法を唱える。
デバイスの不死鳥を象った翼の部分から、炎のような光が現れた。

「なのは! 離れて!!」

なのは…、標的に向かって、それは羽撃く。
出来た風は炎と化し、道のように連なって、一直線になのはへと進む。
しかし、私の警告など聞こえていないかのような反応。

「なの―…!!」

それは、先刻の再現のような状況。
昇る煙。無音の世界。
唯一違うとすれば、今この瞬間も彼女が微塵も隙を見せない点くらい。

「…ソフィアちゃん。
私は、ソフィアちゃんたちが何を目的にここへ来たのか、何を求めて戦っているのか、分からない。
だから…、聞かせて欲しいんだ。
力になれることも、あるかもしれないから…」

微笑み。

全てを包み込む、女神のような…

「………無理、だね」
「どうして? 何事も決め付けて掛かるのは、良くないよ?」

そよ風のような声。

「だって、私たちの目的は…」

その言葉を遮るように。
少し強い風が私たちに吹いた。

靡く髪。
眉間に皴を寄せ、彼女はそれを言葉にしようかどうかを悩んでいる。

数秒して、その風が吹き終わる頃。
彼女はゆっくり、唇を開き始めた。


「……地球を、第九十七管理外世界を、私たちの墓場にすることなんだから…」


悲しみと、何かを吹っ切ったような清々しさ。
自嘲にしか思えない笑い。

私たちがその言葉の真意を考えていると、彼女は徐に自分のバリアジャケットの袖を捲くった。

「! ……それって…」

赤い斑点模様。
恐らく、伝染病か何かの類だろう。

「余命はあと半年程度…。
だから、せめてもの、自分への我が侭…。
母さんの生まれたこの星で、母さんの愛したこの星で、私達は死ぬ」

奇怪な文様を描くように、腕に張っている赤い斑点。
全身が、あれに覆われているのだろうか。

「安心して。これは私たちの星の血が通っているものにしか罹らない」
「……それで、この星の人たちを殺しに来たの?
自分たちの都合で、何の罪も無いこの星の人たちを?」

なのはが、きつい口調で言って、彼女を睨む。
しかし、彼女はそれを、爽やかな笑みで返した。

「罪…というか、恨みかな。
だって、母さんを殺して、私たちの星を滅ぼしたのは…」

闇が、
幼い瞳に、差した。

「この星の人間……私の父さんなんだから」
「!!」

暗い、声。

「もう、いいでしょ?
分かってるんだよ。復讐とか、そんな馬鹿馬鹿しいこと、何の意味もないってこと。
でも、駄目なんだ。
このままじゃ、死んだって死に切れない。
負けるわけにはいかない。負けるってことは、即ち死を意味すること」

父親に、母と故郷を奪われる辛さが、どのようなものなのかは、正直想像が付かない。
でも、きっと凄く辛くて、凄く悲しいことなのだろう。

「でも…、でも、やっぱり間違ってるよ!!
貴女のお父さんは、確かに罪を犯したのかもしれないけど…、この星の人たちは、何も悪くないもの!!」
「私が負けられない理由は…、いや、勝たなければならない理由は、もう一つある」

捲くっていた袖を戻し、彼女はふっと目を瞑った。
その瞼の裏に何を見ているのか。
大体の想像は付いた。

「彼女…、リアの為だよ」

薄く目を開いて、私たちを見据え、彼女は呟いた。
消え入りそうな声。

「…今はああして、何事も無かったかのように戦えているけど。
彼女は壊れてしまったんだ。
母という、自分の心の大部分を支えてくれていた、幸せの象徴が、同じくらいに慕っていた父親に奪われた所為でね」

悔しさと、もどかしさ。
自分の無力を、呪うような顔。

「今彼女を支えているのは、復讐の念だ。
だから、私は彼女を助けなければならない。
彼女の手を汚させはしない。例えどんなに私の行動が間違っているとしても、私は彼女を救うために、彼女の復讐を成し遂げる」

翼が、再び青空を彩った。
覚悟。信念。
全てに、震えた。

もし、もし私が彼女の立場だったら?
そう思わずにいられない。

「分かったら、其処を退いて欲しい。
もう、時間がないんだ」
「………」

言葉が出なかった。
その目に、声に。
私は言葉を失った。

「……復讐を遂げれば、彼女の、リアちゃんの心を救えるの?」
「!!」

なのはの声は、まるであの頃の私に話しかけてくれているような声だった。
静かで、でも、一言一言、鉛のように。

「ソフィアちゃんは、本当にそんなこと、思っているの?」
「煩い……」
「そんな復讐をしたって、何にも変わらない。残るのは、もっと悲しくなった心だけだって、分かっているんじゃないの?」
「煩い!!」

それは明らかな、暴走だった。
火炎は更に力を増し、私たちを焼き殺そうと翼を広げる。

「消えろ…! この星ごと、消えて無くなってしまえ!!」

悲愁に満ちた、炎だった。
雪のような、雨のような、炎。

それは輝き、私たちに降りかかる。

逃げるか…いや、攻撃範囲が広すぎて間に合わない。
だとしたら、立ち向かうしか術は無い。
私はなのはと視線を交わす。
なのはは何も言わず、ただこくりと頷いた。














赤い光が、戦いを止めた。

「……ソフィアが暴走でもしてしまったのかしら?
とても、綺麗な光だわ……」

うっとりと、リアはそれを眺めている。
はやては少し切れた息を整え、リアに言う。

「ええのか? 援護とか、せえへんでも」
「あら。それはこちらの台詞よ?
ああなると、ソフィアはもう誰にも止められないんだから。
私以外の、誰も…」

酷く歪んだ笑みだった。
他者が介入出来ない状況への、優越感。

「貴女には分からないでしょうけれど。
とっても気分が良いものなのよ? 自分が愛した人間が、自分の為に理性を破壊して暴れてくれるっていうのは…」

はやての脳裏に浮かぶ、なのはの姿。
しかしはやてはそれを振り切り、相手を貶すかのような笑いを作る。

「ふん、分かりたくも無いわ。そんな穢い気分」

白銀が、その言葉を支えるように。
熱く光り、冷たく照らす。
リアは微笑むように目を細め、それを嘲笑う。

「やはり、気に入らないわね。
貴女のその、馬鹿みたいな思考と余裕は…」

白い月光が、嘆くように現れる。
冷たい視線は、ただ遠くを見つめている。
季節にそぐわない、冬のような、冷徹な空気。

はやてはシュベルトクロイツを翳し、魔法を展開しようと開口する。
しかし、それは隣から降りかかる炎によって中断される。

「――…なんや、この魔力…?」
「馬鹿……あれ程加減には気を付けろって言ったのに」

魔力だけなら、はやてにも劣らないその力。
呆れているのとは違う。都合の悪そうな表情で、リアは呟いた。

「悪いわね。勝負はお預けよ。
これ以上あの子を頬っておくと、確実に自滅してしまうわ」
「こんなん、何のスキルも持っていない只の魔導師が出せる魔力とちゃうで……
一体何なんや、あんたら」
「……病気よ。この力は、病気なの」

それだけ囁くと、リアはすっと踵を返し、魔力の根源へと向かう。
はやてはその言葉の詳細を聞くことすら許されず、訪れた爆風が止むのを待った。

「なのはちゃん達なら、平気やと思うけど…」

炎に包まれた空間を一瞥してから、はやてもその後に続いた。
その空間の中、即ちソフィアとなのは、フェイトの戦場では、周囲の炎をものともせず戦い続けている三人の姿があった。

「くっ……! 出鱈目だ、こんな魔力……」

フェイトの視線の先には、自分の魔力を制御しきれず、己のみまで傷つけているソフィアの姿があった。

「いずれ、崩壊する……!」

炎の壁。
迫るそれは、恐怖の象徴。
膨大な魔力は炎に化し、悪夢のような灼熱を放ち続ける。

フェイトの言葉通り、身の丈に合わない魔力を出しているソフィアは、崩壊寸前だった。
彼方此方が破れたバリアジャケットに、傷の付いた肌。
純白の頬に、また新たな傷が出来る。
伝う血は、涙のように伝い、落ちる。

そして、それに滲むのは、本物の涙。
俯かれた顔から、泉のように湧き出る、水。
紅に、透明が混ざって、濁る。

周囲は炎に囲まれているにも関わらず、紫に変色した唇。
凍えるように震える身体。

「………助けて、リア……」

涙で滲む視界。

「怖いよ……母さん……!」

どうしようもない恐怖。
僅か十数歳の子供に襲う、孤独。
しかし、そんな少女に、世界は冷たく笑う。


「――…いやああああぁぁああああああ!!!」


遠く響く絶叫。
それはなのはとフェイトは勿論、はやての耳すらも貫いた。

鳳凰が、羽根を揺らす。

「なのは!! 危ない!!」
「…―――」

爪が食い込むほど、なのはは掌を強く握った。
フェイトの声は届かない。
目の前の、ソフィアの叫び。
それはなのはの脳髄を強く叩く。

「くっ……」

このままではなのはが危ない。
そう判断したフェイトは、反撃を開始することを決めた。
飛び交う炎の弾を避け、ソフィアへと近づく。

「………!」

フェイトはごくりと息を飲んだ。
そこに在ったのは、破れたバリアジャケットから赤い斑点をむき出しにした、ボロボロに傷付いた、一人の少女の姿だった。

「酷い……」

思わずフェイトはそう呟いた。
フェイトが一歩ソフィアに近づこうとする。

「来るな!!!」

響く怒鳴り声。
それは、明らかな拒絶。

「それ以上近づくと……」

立っているのがやっとの筈の身体で、ソフィアはデバイスを構える。
フェニックスの眼が、ソフィアの眼が、フェイトを睨む。

「止めろ! それ以上魔法を使えば……確実に死ぬぞ!!」
「煩い……こうするしかないんだ……こうするしか!!」

ソフィアが怒鳴りを上げた、その時。
白い翼が、炎の中に現れた。

それはゆっくり、ソフィアの元に降り立つ。

「可愛そうに……こんなに傷付いて」
「り、あ……?」

リアが、ソフィアの頬の傷を指でそっとなぞる。
白い指に、赤い血が付着した。

「もう大丈夫よ、ソフィア」
「リア……」

くしゃくしゃになった髪を梳かすように、掌でソフィアの頭を撫でる。
母に包まれた赤子のように、ソフィアは顔を上気させた。

「……貴女は見たところ、この星の血統ではありませんことね」
「………」
「ならば貴女に、用は無いんですよ」

落ち着いた口調だった。
目の前に、見るも無残な自分の仲間が居るというのに、ほぼ無反応。
その冷徹な眼は、フェイトの瞳を貫く。

「用があるのは、貴女なんですよ?
そこの、白い魔導師さん」

そしてその目は、なのはへと向けられた。
リアの恨みの対象は全ての第97管理外世界の人間。
つまり、この星で生まれたなのはも、魔力の持ち主だからといっても例外ではないということ。

「貴女、お名前は?」
「……なのは。高町、なのは」
「そう……早速ですが、なのはさん? ――死んでください」

月が、振り翳される。

「なのは!!!」

それは、フェイトの想像を遥かに上回る力。
咄嗟に、フェイトはそれを防ごうと、バルデッシュを振った。

「プラズマ……」

カードリッジが音を鳴らす。
魔方陣が張られ、電撃は響く。

それを見たリアは、一瞬眉を寄せ、しかし、ふと何かを思いついたかのような顔をし、不気味に笑った。

「スマッシャー!!」

唸りを上げて、電撃はリアを目掛けて飛ぶ。
リアは無抵抗だった。
バリアを張る気配すらない。
フェイトは少し怪訝に思ったものの、リアの意図を読むことは出来なかった。


そして、攻撃がリアに当たる、直前。
リアはなのはへの攻撃を中断させ、新たな魔法を展開した。


「ミカエル……月影の円舞曲‐ムーンライト・ワルツ‐」

白い魔方陣が、フェイトの攻撃を飲み込む。
そして、リアの後ろ、即ちなのはの目の前に、もう一つの魔方陣が現れる。

「さあ……どんな気分なんでしょうね。自分の魔法で、自分の大切な人が傷付く時って言うのは」
「な……――!!」

なのはがバリアを張ろうと、手を翳す。
しかし、間に合わない。

それは金色の光を放ち、なのはを容赦なく、貫いた。

「―――――……っ!!」

歪んだ、口元。
リアは眼を細め、楽しそうになのはが落下する様を眺めていた。

「な、のは……?」

その現実が、受け止めきれない。
護るはずだった力。護るための力。
それなのに。

「う、ぁ……」

閉じられた、青い眼。
フェイトは徐々に身体を振るわせ始める。
真っ青になった頬に、冷や汗が垂れた。



―― 傷つけた 自分が なのはを



「なの、は……なのは!!」

裏返った声で、途方にくれるようにフェイトは只管叫んだ。
勿論、それはなのはに届くことはない。
しかし。

「……っ~~、阿呆、強くぶっ放し過ぎやで……」
「………!!」

なのはの背中を守ったはやてに、それは届いた。

「は、やて……」
「ふん……なんつう顔してんのや、自分」

攻撃を防ぐことは出来なかったが、背中の衝撃だけでも緩和する為、はやてはなのはの背中に回り込んだ。
それにより、幾らかのダメージは防ぐことは出来る、と思ったからだ。

しかし、なのはへのダメージはゼロではない。
少なくとも、気絶してしまうほどのダメージは免れることが出来なかった。

「残念……纏めて自滅して頂ければ、楽でしたのに」

優雅な笑い声が、はやての耳を掠めた。
はやてはそれをきつく睨む。

「残念やったなあ、うちらはそんなにヤワやないで」
「あら、それはどうかしら?
少なくとも、そこの金髪の美人さんは、立ち直れるかどうか微妙な状態じゃなくて?」
「…………」

眼を向けられても、何も反応しない。
それは、無言の肯定とも取れる。

「まあ、いいのですけれどね。今、纏めて私の手で葬ってあげるわ……」

リアがデバイスを構えた、その時だった。


『管理局だ!! 武器を置いてもらおうか!!』

「!!」
「……遅いで、自分ら」

管理局からの応援。
それはリア達にとって、余り都合の良いことでは無かった。

リアは然も恨めしそうな顔になり、はやてを睨んだ。

「……一応、名前を聞いておこうかしら?」
「はやて、や。八神はやて」
「そう……私はリア。リア・セフィラム。
きっと、どちらかが生き残っているうちは、貴方達とは争い続けることになるでしょうね」

それだけ言い残すと、リアは直ぐにその場から去った。

「…………」

映るのは、水面。
フェイトの耳には、風の音すら入らない。

無音の世界で、フェイトは一人、佇む。

そんなフェイトの姿を見つめる、はやて。
傷付いた愛おしい存在を腕の中に抱いていても、はやての目はフェイトへと向かっていた。

蒼白した顔。
まるで世界の終わりに直面したかのような顔色だった。

目を閉じたなのはは、何も言わない。
気絶して、はやてに全てを預けた状態。

傷付いた白い防護服。
それはまるで、なのはの儚さを訴えるように、風に揺れていた。







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