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Home > なのはパラレル長編 『七色の闇』 > #5

#5

#5です。
短いかな。やばい在庫も切れてきたよん
ゴチャゴチャしてくるのもまたパラレルの醍醐味(黙れ
では追記よりどうぞ。






悲しい瞳。
そう見えてしまった。

悲しい微笑。
そう見えてしまった。

そして―
悲しい音色が聴こえた。


#5『悲愴』


母さん。
何処に居ますか。

母さんの仇は、
絶対に私が取ってみせます。


フェイトの眼は、光を持たない。
呪いを掛けられたように、その瞳は輝かない。
何時か必ず、と。

フェイトは血の気の無い掌を握る。

繊細な指先は今にも壊れそうだった。
儚さは変わらず、それはフェイト自身が望むこと。
そう自分に言い聞かせ、フェイトは己の瞼に焼きついた、あの悲しい瞳を消した。

消し去った、
つもりになった。


* * *

城は夜の月光に照らされ、白亜は哀歓に満ちた色を見せる。
深い森の奥に隠されたその城は、魔王の住む城。

今宵も魔王は其処に居た。
城の一角、魔王は真っ白い椅子に腰掛け、魔王にしては珍しい漆で光る木材の茶色が中心である楽器を手にしている。

それは、古く、しかしとても綺麗なバイオリンだった。
ナノハはそっと弓を手に取り、絃に当てた。

蒼茫の瞳が見えなくなる。
優雅に微笑んだ彼女は、ゆっくりと音色を奏で出した。
嚠喨な音が響く。静かな城で有るが故に、それは余計に研ぎ澄まされて聴こえた。

三日に、一度。

彼女は弾くことにしているらしい。
そして毎回、曲は変わらない。

哀歓という言葉が良く似合う曲だった。
時に撫でやかに、時に衝くように。踊るようにその曲は奏でられる。

曲の拝聴者は、二人。
一人はそれが常のことであるもの。
そしてもう一人は、初めてそれを聴く新参者であった。

愁いを帯びた曲に思えた。
フェイトには、その曲の喜びの音が聴こえない。
何処までも悲しく、辛い音色にしか聴き取れない。
それは、フェイトの瞳が生きていないから、なのかもしれない。

「人の心は、」

弾き終えたナノハは、呟いた。
それも曲の途中の音色のような、声とは思えない声だった。

「人の心は読めないけど、人の心は色々な所に表れるものだよ」

深意に満ちた瞳が、フェイトを貫く。
身構えるフェイトを、ナノハは優しい眼差しで包み込んだ。

「だから、フェイトちゃんの心が枯れていることも、フェイトちゃんの心が空っぽなことも、私にはよく分かる」

利いた風な口をきくな。
そう怒鳴ってやろうとも思ったが、言えなかった。
図星だったから、ではなく、冷眼でありながら温かい瞳を前にして、何も言えなくなってしまったから。

「私はね…、救えない子は救わないんだ」

純白の薄い手袋で覆われた指でスクロールを撫でながら、一人静に囁き続ける。
白いデスクに置かれた弓が、月の光を受けて反射していた。

「届かない物には手を伸ばさないし、勝てない勝負もしない」

フェイトはその言葉を不審に思った。
これ程の力を持った存在に、そんな物など在るのだろうか。
怪訝に見つめるフェイトに、ナノハは小さく笑う。

「だから…。
何でも手に入れられるこの力と、誰にでも勝てるこの魔法がある限り、私は欲しいものは何でも手に入れるし、勝ちたい相手、勝つ価値がある相手には、勝負を仕掛け続ける」

そこで、レイは俯き、しかし小さく微笑んだ。
気づいているのかいないのか、ナノハはそのまま言葉を続ける。

「そして同等に…、救える存在はとことん救ってみせるよ。
それが例え、何であろうと誰であろうと、私が救いたいと思ったら」

その言葉と同時に、ナノハは立ち上がる。
真っ白い装飾が、亜麻色の髪が靡く。蒼茫の瞳は何よりも輝き、この世の全てを照らすような光で溢れていた。

フェイトは初めて、目の前の存在に恐怖を感じた。

その言葉に、惻隠の情など微塵も無い。
救う相手のことなど、どうでも良い。只己の好奇心と興趣を満たすための遊びに過ぎない。
そんな眼。そんな微笑。

「人の運命を―…!」

フェイトが開口した。
搾り出した声は、ナノハの耳を掠める。
嗄れた声。そうとしか思えない。しかし、潤った時にその声はかなりの美しさを魅せるだろう。

「人の運命を、そうやって幾つも幾つも弄んで…、一体何が楽しいんだ!」

正義の使者にでもなったかのような台詞。
少なくとも、死んだ眼をした人間が発して良いような言葉では無かった。

「人はね…。愚かで醜い、弱く穢れた魂の結晶体なの。
楽しませるどころか、不愉快にしかさせてくれない不完全の塊でしかない」

「それなら、どうして私を―…!!」

叫び、と云うには余りにも弱弱しい音量だった。
眉をひそめ、フェイトは叫び続けようとするが遮られる。

「だから、変えようかなって。私の手で、その薄汚れた人間を」

その言葉が本心なのか、どういった意味を持っているのかは、ナノハ以外誰も知らない。
いや、本人すら知らないことなのかもしれない。

「…七人目、だよ」

それは、蒼髪の少女の言葉と同じ数だった。
緑色の輝いた瞳が脳裏に浮かぶ。直ぐに消した。

「みんな、変わった。
そして、みんなハズレだった」

ナノハのハズレと云う言葉には、何故か残念だという意味が篭ってはいない。
楽しそうに、面白おかしそうに、その言葉を当てはめているだけ。

「君は…、どうなんだろうね。フェイトちゃん」

ナノハが拾った存在は、七人。
その内、六人がハズレ。
レイも、はやてもその中の一人。
しかしレイは表情を、微笑を崩さない。きっと、はやてもそうなのだろう。
六人中、六人が、ハズレと言われれば皆、笑うはずだ。

それを、その意味を、フェイトは知らない。

「貴様は、悪魔だ。人を変える、悪魔…」
「だから、魔王だってば。何回言わせる気?」

いつか絶対に殺してやる。フェイトは自らに誓った。
勿論その眼は、‐死んで‐いるが。

「まあ、好きなだけ怨むと良いよ。私は全然構わないし」
「黙れ…。貴様の好きなようには、させない…!」

レイが笑う。声には出さないが、その表情はとても楽しそうだった。
同じように面白そうにナノハは微笑んだ。

「そう…。頑張ってね、小さなナイトさん」

歯軋りが鳴る。
フェイトが魔法を展開する前に、ナノハはフェイトの右手を掴んだ。

「私は有言実行の出来ない無能が大嫌いなの。
だから、ちゃんとその言葉、やり抜いてよ。さもないと私がフェイトちゃんのこと殺しちゃうから」

フェイトは蒼い瞳を睨み、その手を振り払った。
ナノハは微笑み、振り返って再び椅子に腰掛ける。バイオリンを顎に当て、弓を手に取り呟いた。

「アンコール、聴く?」

フェイトは横にも縦にも首を振らない。
ナノハは小さく息を吸い、弓を絃に翳した。





そして、曲が鳴り止んだ。
夜の闇に静かに溶け、消えていった。

そこで、フェイトは気が付いた。
彼女が?左利き?であると云うことに。

つまり、彼女がしてきた今までの攻撃は、利き手すら必要としないものだったということ。

そこで、フェイトの脳に浮かんだ言葉。
圧倒的な力の差が生んだ、一つの言葉。

フェイトは小さく俯き、その言葉を脳内から消し去る。
そして、残ったのは悲しみで溢れた旋律。

消そうとしても消せない、音色だけだった。


「ご静聴ありがとうございました。如何でしたか?魔王の音色は」

茶化すようにナノハが言った。フェイトは勿論答えない。
その様子に、拍手の一つくらいはあっても良いんじゃないかと笑った。

「…寝る。ベッドは?」
「可愛くない居候だね…。向かいの部屋にあるよ」

フェイトは踵を返すと、真っ白の扉に手を掛けて出て行った。
廊下まで白く、目を良く凝らさないと何も見えなくなってしまう程だった。
フェイトは無言で正面の部屋に繋がる扉を開いた。

「…もう一曲聴く?レイ」
「…ご遠慮いたします。主も、その気はないのでしょう?」
「流石だね、レイ。よく分かってる」

残された二人は偉容に微笑みを交わす。それは一つの芸術作品‐アート‐のように流麗と容になっていた。
ナノハは白いケースにバイオリンを丁寧に仕舞う。パタン、と閉じられるのを待ってからレイはナノハに声を掛けた。

「貴女の考えることは、正直私には良く分かりません」
「ふふっ、そうだろうね。何せ私自身全くサッパリ分かっていないもの」
「…でしょうね」

呆れでも嘲笑でもないその言葉は、魔王の笑いによって掻き消される。
魔王が上を見ると月明がナノハを貶す様に包む。白い肌と装飾に白い光が混ざり合い、レイにはとても綺麗に思えた。

「…レイ。私は夜が好きだよ」
「存じて、おりますが」

ナノハの唐突な言葉に呆気に取られたような返答をするレイだったが、心なしか少々彼女の声のトーンは弾んでいるように思えた。
事実、レイはその時とても楽しそうに笑っていた。

「でも、夜の闇を照らすあの大きな白い月は好きになれない。
何でだと思う?」
「…分かりかねますね。何故です?」

レイは考えた素振りなどは一切見せないで答える。それでも、ナノハは満足そうに微笑んで、レイの問いに答えた。
穴が開くほどに月を見つめているナノハからは、それを嫌悪している様子など微塵も感じ取られない。

「思い通りにいかないから、だよ。
思うように動いてくれず、触れられもせず、私の前から消えてもくれない」

レイは答えられなかった。
正しい答えが、言おうと思ったことが口に出せなかったというのが真理なのであろうが、レイはそう思った。

「…闇も、星も、空も…。同等なのではないのですか?」
「それは…、ちょっと違うかな。それは私には眩しすぎるし、それに似合わない」

否定もせず、肯定もしない。
ナノハは小さく息を吸い込んで、静かに吐き出す。
背中の重みを全て椅子に掛けて全身の力を抜いた。少し楽になる。

「きっと、欲しいとか欲しくないとかそれ以前の、もっと根本的な何かが否定をしているんだよ。
そう、例えば…、神様とか」

蒼く眼光が放たれる。それはレイにではなく、月に向かって送られたものだった。
最早ナノハと月を遮っているものは、一枚の脆い透明な窓硝子しかないとすら思える。
レイはそれが堪らなく面白く、痛いほどに悔しかった。

「私には…、よく分かりません。私は…神に嫌われた存在ですから」

それなら神などという存在など、全てを失くしてしまえば良い。
己の思考から、神という存在を討ち殺してしまえば良い。

彼女にできることと云えば、それくらいだった。



 * * *



夢にまで見た世界が、今ここにある。
仇と戦えるという状況下が、死を決意するまで望んでいたことが、実現している。

―脳を駆け抜ける螺旋

しかしそこで知ったのは、圧倒的な力の差。
戦うフィールドは同じでも、次元が全く違った相手。

―悲しみで満たされた譜面

恐らく、幾度挑んでも勝敗が目に見える勝負。
届かない、途轍もなく遠い存在だと思い知らされるだけの勝負。

―壮麗な旋律

そして、もう一つ。

―鳴り止まない音

悲愴で埋まっていた、彼女の淡い瞳の色だった。





―鐘声の如く、深甚で怪異に、それは響く


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