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#3・後

#3後半戦。
ぶっちゃけフェイトそんはこれくらい弱い方が似合ってるとおもうな(どーん

正直この辺の需要の無さは否めないです。飛ばして#5あたりからでも充分。(じゃ書き直せよ

では追記よりどうぞ!(去れ







見渡す限り白い部屋。
壁、天井、床、机、キッチン、食器。

全てが尽く白に埋め尽くされている。
そこはまるで、幻想空間の様な場所だった。

しかし、少女の視線はその空間ではなく、テーブルに綺麗に並べられた物に行っていた。

「何だかお預けされた空腹の仔犬みたいだね。
食べるんなら、ちゃんとレイに頂きますって言わなきゃ駄目だよ」

少女は然も複雑そうな顔でナノハを睨んだ。
ナノハはそれを微笑みながら交わす。

「…良いですよ、別に。
多めに作りましたから、好きなだけ食べて下さい」

テーブルは四人様だった。
レイは自席に座り、主の着席を待つ。

ナノハも続いて座った。そして、少女の着席を待った。

「っ…―」

少女は、ナノハの隣に座った。

「それじゃあ、頂きます」

焼き立ての柔らかそうなパン。野菜と肉の温かいスープ。カリカリに焼かれたベーコンに乗せられた目玉焼き。

少女は気付かれない様に生唾を飲んだ。

「…普通、仇を相手にそんな言葉は言えません。
覚めきってしまうと美味しく無くなります」

「それもそうなんだけどね。
ちょっとからかっただけだよ。
良いよ、食べて。レイも良いって言ってくれてるし」

優しい、瞳だった。

その瞳は、少女が考えていた仇の像とは全く違う物だった。

少女は少し疑ったが、直ぐに邪念を取り戻し、しかし食事は取る事にした。

程よく焦げ目の着いたパンを手に取り、暫く眺めた後、口に入れる。

美味しかった。

「美味しいでしょ?
レイが焼いてくれたんだよ」

ナノハもパンを口に含み、少女に、そしてレイに微笑んだ。

少女はそれを無視し、再びパンに齧り付く。

少し熱かった。

「焦んなくっても取り上げたりしないから、ゆっくり味わって食べなよ。
その方が美味しいから」
「っ―…、ごふ」

「……言わんこっちゃない」

詰め過ぎたのか、少女はパンを喉に詰まらせた。
吐き出しそうになるのをこらえて、気合いで飲み込む。

そして再び詰め込み始めた。

「ふふっ…、あははっ。
面白いね。本当に、仔犬みたい」

少女は聞こえない振りをし、パンを平らげスープを啜った。

コンソメの、塩気が適度に効いたスープだった。
温くも無く熱くも無い、丁度良い温度のそれは、仄かに湯気が立っている。

一気飲みすると、卵とベーコンに食らい付いた。
一瞬にして、それは少女の胃に納められる。

「…パンとスープなら、まだありますよ」

結局、少女は一人で鍋の中身を全て食べきった。

「―ご馳走様、レイ。美味しかったよ」

「いえ。…お茶、入れましょうか?」

「うん、お願い」

何年振りの、ご馳走だっただろうか。
少女は満腹の身で、そんなことを思っていた。

「…四年前」

少女は唐突に発せられたその言葉に驚愕し、眼を見開いた。

「思い出したよ。プレシア・テスタロッサ」

肘を突いて、眼を閉じ微笑みながらナノハは独り言のように呟いている。
その口から出た、少女の母の名にも、少女は反応を示した。

「あの火事は…」

薄く眼を開き、ナノハは少女の顔を見る。
見てから、言葉を止めた。

「…知ってる訳無いか」

「貴様…!
やはり、母のことを…!!」

食器が揺れる音に、椅子が倒れる音が混ざる。
変わらず、少女の瞳は‐死んで‐いた。

「騒々しいよ。食後に暴れるのは良くない」

「煩い、黙れ!
母を何処へやった」

「知らないよ。こっちが聞きたい位。
折角集めたロストロギア、持ってちゃったし」

「惚ける気か、悪魔め!」

金色の魔法弾がナノハに降った。
そして、消える。

「悪魔…ねえ」

ナノハが右の腕を上げた。
そのまま胸の前に持っていき、掌を握る。

そして、光った。

「このチカラを、そう呼びたい訳?
ホント…、人間って何時もそうやって、自分の能力と懸け離れた存在のこと、神とか悪魔とか言って逃げてるよね。馬鹿みたい」

開くと、その少し上には桜色の球体が出てきた。
少女の先ほどの魔法弾の数千倍は威力が有るように見えた。

しかしそれは、ナノハの真の力の、何億、何兆分の一の欠片に過ぎないもの。
ナノハの退屈そうな微笑で、それが分かる。

「ま…、正直人間が何と呼ぼうと構わないんだけど…。
悪魔はちょっと尺かな。どうせなら…」

バチバチと音を立てるそれを、ナノハはふっと握りつぶして消した。
そして、優しく笑う。

「魔王とかが良いかな」

キッチンでは、丁度湯が沸いていた。



「それじゃあ、そろそろ散歩の時間かな?」

ティータイムを終え、ナノハが窓の外を眺めた。
大体昼間より少し前辺りの時間帯。

「付いてくる?
置いて行っても良いんだけど、お昼は抜きだよ」

少女は、思った。

何をやっているんだ、自分は。

仇相手に食事を貰い、挙句食べ。
これじゃあ本当に只の馬鹿じゃないか。

それに、今一この《魔王》とやらの意図が掴めない。

一体こいつは何がしたいんだ。
その微笑の意味は、その何もかも見透かしたような眼は。

「…貴様は、」

「ナノハだよ。ナノハ、タカマチ」

少女の言葉を遮ってナノハは己の名を名乗った。
少女は無視して、続けた。

「何が、…したいんだ?」

仇と銘打った相手なのだから、その力で殺しても良いのに。
そうしない理由は。
何なんだ。分からない。

「…そうだね、何がしたいんだと思う?」

ナノハは問いに問いで返した。
少女はそれを睨んで返す。

「母さんは、消えた」

「へえ…」

「皆、貴様がやったと思っている」

「ふうん…」

間の抜けた一つ返事。
微笑が崩れない。
忌々しいと、少女は思った。

「貴様は…、母さんの仇だ」

「あっそう。
良いよ、目一杯恨んで。その方が、楽でしょう?」

少女は奥歯を噛んだ。
柔らかな微笑み。 風?海?空?
何かに似ている、その微笑。
言えることは、一つ。

気に食わない…

「ね、何て云うの?」

ナノハの問い。
少女の問いには何一つ答えず、ナノハは問うた。

「名前、何て云うのかな。
それ位教えてよ。別に私の名前なんて呼ばなくても良いからさ」

これ程、自分の無力さを実感させられた事など無かった。
少女は強く、拳を握り締めた。

「…フェイト・テスタロッサ」

「そっか。じゃ、フェイトちゃん。
フェイトちゃんが幾ら私を恨もうと構わないけど、フェイトちゃんの力じゃ私を殺せない。
それ位は分かったでしょ?」

少女…、フェイトは拳を更に硬く握り締めた。
爪が手のひらの皮を破り、鮮血が滲んだ。
ナノハは薄く笑い、フェイトの紅眼を覗き込み、言葉を続けた。

「逆に、私がフェイトちゃんを殺すことは、道端で歩いている蟻を踏み潰す位に簡単な事なんだよ。
…まあ、精々私を退屈させないでね。フェイトちゃん」

存分に呼び、満足したのかナノハはフェイトに踵を返してレイの元に戻る。
そして、一言。

「…いい名前だね、フェイトちゃん」

フェイトは呆け、その甘い音が耳に入っていくのを只感じていた。
白い部屋に、足音が響く。ナノハは扉に手を掛けると、そっと部屋から姿を消した。



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